概要
イグアス社所有のIBM Power Virtual Server(以降、Power Virtual Server)検証環境を使用して、保管および復元におけるレスポンス検証を実施した。
【対象製品とデータ保管先】
- IBM Cloud Storage Solution for i(CS4i)→ IBM Cloud Object Storage(ICOS)
- Hybrid BACKUP → IBM Cloud IaaS Server(Windows Server2019)
→ イグアス社 オンプレ機(Windows Server2019)
背景・課題
Power Virtual Server 上の IBM i 環境ではテープ媒体へのバックアップがサポートされていないため、バックアップソリューションを検討する必要がある。そのためIBM社推奨の CS4i を使用して ICOS への保管/復元と、VINX社の Hybrid BACKUPを使用して IBM Cloud上のWindows Serverとイグアス社オンプレ機のWindows Serverへの保管/復元操作の実測を行った。
また、Hybrid BACKUP実行時のIBM i パフォーマンス測定を行い、CPU使用率の分析を行うことにより必要なCPUリソースの参考とする。
製品概要
IBM Cloud Storage Solution for i(CS4i)
IBM i のデータをIBM Cloud Object Storage(ICOS)との保管/復元を実現するバックアップソリューション
Hybrid BACKUP
Disk to Diskで保管を実現するバックアップソリューション
構成内容
使用した機器の仕様は以下の通り。
◆ Power Virtual Server
- データセンター:東京04
- モデル:S922
- ディスク容量:380GB
- メモリ:8GB
- コア数:0.25(3750CPW)
- OS:IBM i 7.3
- 一次言語:2962(日本語)
- QCCSID:5035
- 検証ライブラリー容量:10GB(2GB、3GB、5GBの3ファイル)
◆ IAサーバー(IBMクラウド内)
- WindowsServer2019 Standard
- CPU:Xeon Gold 6140 2.30Ghz
- メモリ:8GByte
◆ IAサーバー(イグアス 川崎本社内)
- WindowsServer2019 Standard
- CPU:Xeon Gold 6140 2.30Ghz
- メモリ:8GByte
◆ ネットワーク
- IBMクラウド - イグアス社(川崎本社)間のVPN 接続環境を利用(IPSec VPN 100Mbps)
検証内容
IBM Cloud Storage Solution for i(CS4i)
- 保管対象ライブラリー(10GB)について、圧縮ありと圧縮なしの2パターンにおける保管/復元時間の測定を行う。
- ICOSへのアクセスルートは、Public と Private の2ルートで実施する。(下記検証概要図参照)
Hybrid BACKUP
- 保管対象ライブラリー(10GB)について、圧縮ありと圧縮なしの2パターンにおける保管/復元時間の測定を行い、パフォーマンスデータの収集も実施する。
- 保管先はIBM Cloud上のWindows Serverと、イグアス本社(川崎)内のオンプレ Windows Serverの2台を使用した。
IBM i パフォーマンス分析
- Hybrid BACKUP製品の必要CPUリソースサイジングのために、保管/復元操作実行時の収集データを分析する。
検証概要図
検証構成イメージは下図の通り。
ICOSとのアクセスは、PublicルートとPrivateルート(VRAにNAT設定)の2パターンで検証を実施した。
検証結果
IBM Cloud Storage Solution for i(CS4i)vs Hybrid BACKUP
CS4i 欄の保管/復元時間は、OSコマンドの実行時間とICOSへのアクセス時間の合計。
IBM Cloud Storage Solution for i(CS4i)
(OS機能)
(ICOSへの保管/復元)
Private接続の場合、保管と圧縮無しの合計は約19分前後、圧縮有りは約14分です。復元は16~20分位です。
Public接続の場合、保管と圧縮無しの合計は約20分前後、圧縮有りは約14分です。復元は17~20分位です。
全体的には、Private接続もPublic接続もあまり変わらない結果でした。
Hybrid BACKUP
オンプレ環境での圧縮無しはネットワークの影響が大きいため、ほぼ提案することがないので未計測。
IBM i 側で保管データを小さくし転送データ量を少なくした方が、全体の保管時間が短くなるという結果だが、Hybrid BACKUPでは保管しつつ転送も行うので、システムの状況やネットワーク負荷等の影響により、圧縮後サイズが小さい方が、必ず保管速度が速くなるということではないので注意が必要。
(CPU稼働状況)
①の時間帯で圧縮保管と、復元操作を実行した。②は圧縮なし保管でのCPU負荷状況。 今回のテストデータでの高圧縮保管では、約1,000CPWのCPU負荷がかかる結果となる。
検証考察
IBM Cloud Storage Solution for i(CS4i)
- CS4i の保管/復元操作は、OSコマンド(SAVLIB/RSTLIB)の操作とICOSとの転送時間の合計値となる。圧縮の有無にかかわらず、保管/復元操作の時間は変わらないので、圧縮有りの方が圧縮無しの場合より保管/復元時間が速くなったのは、実データ転送時間の影響と考えられる。
- ICOSへのアクセスをPrivateルートとPublicルートの2パターンで計測したが、結果としてはあまり変わらなかった。しかしPublicルートはInternet経由のベストエフォートであるため、実運用ではセキュリティ面も含め注意が必要。
Hybrid BACKUP
- Hybrid BACKUPの保管/復元時間が圧縮無しより圧縮有りの方が遅くなったのは、CPUの今回のサンプルデータの圧縮処理に影響を受けたと思われる。
- データの保管先であるWindows Serverを、オンプレとクラウドパターンで計測した結果、圧縮率が低いほどオンプレ機での結果が悪くなる傾向が見られた。
- データ保管先をオンプレ機で運用する場合は、対象データ量とネットワーク環境に十分考慮すべきである。
【検証協力】
株式会社ヴィンクス様、ご協力ありがとうございました。